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欧州エネルギー危機 in オランダ 電力会社との契約を見直そう

2022、23年冬は欧州全体のエネルギーがひっ迫した厳しい冬でした。理由はもちろんロシア産ガスの欧州向け供給が減ったためで、電力・ガス代が上がったのに加え、それらの価格高による物価の高騰により、わたしたちの生活に大きな影響が出ました。

最近エルニーニョの出現により、今年の冬も厳しい寒さになるとの予想も出ています。少し気が早いかもしれませんが、冬に向け、去年学んだことをまとめます。

運命の分かれ道は電力会社との契約

オランダでの電力会社の選び方について以前記事にしました。

オランダで電気代を節約するには

 

オランダでは現在特例で、価格上限制度があります。各家庭が使用する電力・ガスの一定の消費量に対しては政府の定めた上限額が適用され、その消費量を超える分に関しては市場価格を支払うことになります。

Price cap for gas, electricity and district heating (オランダ政府サイト)

さてこの価格上限制度は2023年12月31日で終了となります。

 

全国45以上ある電力会社が様々な電気・ガスのプランを提供しているオランダ。

月々の電気代を抑えるために、もちろんなるべく安くなるプランを選ぶのが大事ですが、今後は契約形態も慎重に選んでほしいと思います。

 

電力会社との契約は2種類あり、kw/h当たりの料金単価が市場価格によって変わる変動型契約と、料金単価が契約の一定期間変わらない定期型契約があります。

 

変動型契約の場合、冬にまた電力がひっ迫した場合、市場価格の変動によっては高額の電気使用料を支払わなければならない可能性があります。

しかし、もし電気料金が今のまま低価格で推移すれば、現在よりも安い価格になる可能性もあります。

 

一方定期型契約の場合、1年から最大3年まで単価が変動することはありません。

将来の電気料金の増減にかかわらず契約内容の単価が適用されるので、安心感があります。ただし市場価格が下がった際にも高い料金を支払うことになるので、損した気分になるかもしれません。また、何らかの理由で契約期間満了を待たずに契約を破棄する場合、料金が発生します。

 

去年電力料金が上がった時、我が家の契約形態は変動型でした。そのため、冬は変動する電気料金に合わせてかなり単価が上がり、一時は1kw/hあたり1ユーロという期間もありました。

2018年は1kw/hあたり0.17ユーロでしたから、約6倍になった計算です。

わたしたちの家の暖房はヒートポンプという比較的新しい暖房技術を使った床暖房なのですが、これがまた電気を結構使う厄介者で、毎日使用量が上がらないかびくびくしていました。

 

では、エネルギー危機で家計も苦しくなった冬をどうやって乗り越えたのか?

近年注目のヒートポンプ、使用電力は…?

ここ10数年の間一般住宅での導入が増えているヒートポンプ。

熱媒体や半導体等を用いて低温部分から高温部分へ熱を移動させる技術を使った暖房(&冷房)機械。欧州ではヒートポンプも再生可能エネルギーと定義されているそうです。(参考: Wikipedia

わたし自身ヒートポンプの仕組みはよくわかっていないのですが、現在の家を購入した際、政府から補助金が出たことは覚えています。

 

そんな「環境に優しい」とされるヒートポンプ、実際のところ使用電力はどれくらいなのでしょうか。

昨年の冬、太陽の出ない曇りの日で日中の気温が+1℃程の場合、一日の電力使用量は15kw/hほどでした。

ヒートポンプはシャワーなどの給湯にも使われるので、家の中で使われる電力はほぼこのヒートポンプが占めると言えます。

また、昼夜問わず設定温度を一定に保とうとするので、夜間に気温がぐっと下がると、電力の使用量は大幅に上がります。

 

前回の記事で1kw/h当たりの料金が1ユーロにも上がった期間があったと書きました。つまり一日の電気使用料は15ユーロという計算です。

これに単純に30をかけると、ひと月の電気使用料は450ユーロ(1ユーロ=140円換算で6万3千円)です。

…高いですよね。環境に優しいのと、電気使用料の多さは比例しないということがわかりました。

 

電力使用量を下げ、冬を乗り切った方法

オランダの住宅は、日本とは違いセントラルヒーティングが主流です。

我が家を例にとると、ヒートポンプが床暖房を通して各部屋へ熱を送って温める方式です。

日本で暮らしてきたわたしは、寝ているあいだ室内設定温度を下げれば、電力使用量を下げられると考えてしまいます。

ところがセントラルヒーティングの場合、設定温度を極端に下げてしまうと、温度を上げた際に一気に大量の電力を使用するので、効率的とは言えません。

 

そこで我が家がとった対策は、単純に設定温度をずっと18.5℃に保つ

一冬経験して言えること、これ結構寒いです。

ちなみに一昨年の冬は20.5℃を保っていたので、2℃低くなっています。

オランダの冬はただでさえ暗くて長いのに、そこに家の中の寒さが加わってかなりきつかったです。

 

ここで、暖房をあまり使えない状況で少しでも温かく過ごすために、我が家で実践した対策を紹介します。

  • マフラー&ブランケット常時使用
  • 充電式の湯たんぽ
  • 玄関とリビングの間の扉下部に、すきま風防止用のシールを貼る
  • お湯をはっての入浴はしない
  • ドライヤーは11時以降の電力が安くなる時間帯に使う
  • コーヒーメーカーなどの保温機能は使わない
  • 使っていない電気機器の電源は抜く

などなど…。

他にもなるべく家計全体の出費を抑えるために、外食なし、なるべくスーパーの特売品を買うなど、涙ぐましい努力を重ねなんとか冬を乗り切りました。

 

2023年春からの電力会社との新契約

寒さが少し和らいできた2023年3月頃、欧州の買い付けるガスの値段も順調に値下がりし、オランダの各電力会社は定額型契約を新規で受け付けるようになりました。

わたしたちも速攻でこの契約(契約期間は9月までの半年)に替え、現在では日々の電気料金が2~3ユーロ(月々の使用料金は90ユーロ、12600円)ほどに劇的に下がりました。

現在契約している電力会社では、長期(最長3年)の定額型契約も申し込むことができるようになっています。

9月からどの契約を選ぶかはまだ決めていませんが、おそらく1年間の定額型契約にすると思います。

 

電力会社との契約ひとつをとっても、よく調べて決めれば大きな節約につながることを身をもって理解しました。

オランダ人はケチだとよく言われていますが、実はこういう危機が起こった時に対応できるある程度のお金を蓄えておくことと、真っ先に対策をとれるような柔軟性とを持ち合わせている人たちなのかもしれません。

短い夏が終わったらすぐに寒い冬がやってきます。

みなさんも電力会社との契約をもう一度見直してはいかがでしょうか。